【2026年インド現地最新レポート】インドで日本企業の“ソフトパワー”が勝機を掴む理由

Feb 13, 2026By Rie Ohno
Rie Ohno

はじめに:インド進出の「常識」をアップデートする

インド進出といえば、今なお「広大な土地に工場を建てる」「安価な労働力を活用する」といった、製造業中心のイメージを抱く方が多いかもしれません。

しかし、2026年1月に現地へ降り立った株式会社インド代表・大野が肌で感じたのは、全く別の兆しでした。それは、ホスピタリティやサービスといった、いわゆる「ソフト領域」にこそ、これまでにない巨大なビジネスチャンスが眠っているという確信です。

現在、インドでは富裕層の増加や外資系企業の進出により、「価格の安さ」よりも「体験の質」や「安心感」に対して、対価を支払う層が確実に拡大しています。この市場環境において、日本企業が長年培ってきた「運用・品質・体験設計」の力は、十分に収益化可能な「有力な競争力」になり得ます。本記事では、出張中の具体的な体験をもとに、インドの現状と日本企業が発揮できる可能性を整理します。

1 空港に降りた瞬間、インドはすでに「改善フェーズ」へ

1.1 デリー空港で見えた、配車オペレーションの劇的進化

デリー空港に到着してまず驚かされたのは、配車サービス(UberやOlaなど)の乗り場の変貌ぶりでした。

かつてのインドでは、配車は「個人同士のマッチング」という色彩が強く、アプリで呼んだ車を一般車の大群の中から探し出すという、カオスな状況が当たり前でした。

しかし現在は、利用するサービスランクごとにレーンが明確に区分され、乗車体験は非常にスムーズになっています。大きな変化ではありませんが、「混乱を仕組みで抑える」という設計が現場に導入されている点に、確かな進化を感じました。

*Uberは価格帯ごとに明確なランク分けがあり、標準(GO)・快適(Premier)・大型(XL)・高級(Black)と体験の質が設計されています。
ランクにより金額や配車時間も異なります。

1.2 仕組みが変わると、人の振る舞いも変わる

面白いことに、サービスランクが上がるほど、ドライバーの対応は丁寧になり、車内環境や運転の質も格段に高まっていました。
今回特に感じたのは、ドライバーさんの心使いです。

例えば、標準ランクGoのドライバーは、空気が悪いデリーの市内を窓を開けて走行していました。エアコンを使わないことで、ガソリンの消費を抑えるためです。
一方、1つランクの高いPremierのドライバーは、窓を閉じエアコンで空調調整をしてくれました。

乗車中の会話にも、Premierのドライバーには心遣いが見られる場面が多くありました。

これは単に「個人の資質」によるものではなく、「評価・報酬・ルール」という設計が行動を変えているだと感じました。

富裕層やビジネスパーソンは、良いサービスに高い対価を払う。
ドライバーは、高い評価を維持しなければ報酬が下がり、高ランク客を相手にできなくなる。
結果として、自発的に快適な体験を提供しようとする工夫が生まれる。

サービス品質は、決して精神論ではなく「設計」で上げられる。その事実を、インドの現場から強く実感しました。

1.3 インドは「未成熟」ではなく「改善の途上」にある

今のインドは、完成されていないからこそ、改善の余地がいたる所に残っています。 そして重要なのは、その改善がすでに現場レベルで始まっているということです。

これは、インドが決して「まだ早い市場」ではなく、「今こそ関わるべき市場」であることを示しています。評価制度や報酬体系など、分かりやすい「仕組み」を導入することは、インドの労働者にホスピタリティを浸透させるための極めて有効な手段なのです。

つまり、インド市場は「精神論」ではなく「設計力」で勝負できる市場に入りつつあるのです。

2 ホテルで見えたのは、設備投資よりも「運用」への伸びしろ

2.1 コーヒーマシンの水滴が示す、体験設計の課題

次に、1泊10,000円〜15,000円ほどのビジネスホテルでの気付きです。 朝食会場のコーヒーマシンは調子が悪いのか、水滴が垂れ、周囲にコーヒーが飛び散っていました。スタッフは常に会場を回っているにも関わらず、誰一人としてその汚れを拭き取ったり、利用を一時停止したりといった対応をしていません。

日本であれば当たり前の「気配り」が、ここではまだ機能していませんでした。

2.2 「清掃スタッフ」はいるが、「衛生動線」が設計されていない

また、トイレには常に清掃スタッフが常駐し、利用のたびに清掃が行われています。これはインドの日常であり、利用者が個室を利用するたびに清掃スタッフがモップで清掃をします。

とあるモール内のトイレを利用した際、ふと清掃スタッフの行動を見ると「床を拭いたモップを手洗い場で洗っている」場面に遭遇しました。

日本人からすれば「不衛生」に感じるこの行動も、現地では「水で流せば清潔」という感覚が一般的であるため、悪気なく行われています。しかし、多国籍なユーザーが集まる場所では、グローバル基準の衛生管理を「ルール」として徹底させる必要があります。

2.3 ラグジュアリーホテルでも「詰め」が甘いという商機

一定以上の価格帯のホテルであっても、浴室の隅にカビが残っているなど、日本人の視点では「惜しい」と感じる部分が多くあります。

ぱっと見の印象が良くても、細かな不備が積み重なれば、SNSやレーティングサイトでの評価は下がります。

逆に言えば、大規模な改修をせずとも、日々のチェック体制やちょっとした運用の工夫だけで、評価を劇的に高めることが可能なのです。

3 公共交通・観光地で痛感した「情報」と「導線」の価値

3.1 遅延よりも「説明がないこと」が顧客満足度を下げる

今回のオフを利用して、高速鉄道を利用し、久々にタージマハルへ出向きましたが、その際大幅な遅延が発生しました。1時間40分で到着する距離が、濃霧により4時間かかりました。

日本で同様の遅延が発生した場合、逐一アナウンスが入り遅れた原因や謝罪が行われますが、車内では理由も復旧見込みもアナウンスされません。

日本の場合、遅延そのものよりも「情報の欠如」による乗客の不安を解消するため、謝罪や迂回案の提示など、徹底した情報提供が行われます。

インドにおいて、この「情報の設計」が改善されるだけで、移動の快適性は飛躍的に向上し、ビジネスや観光に好影響を与えるはずです。特に、海外からの観光客はより安心で快適な旅とすることができるように思います。

ちなみに、インドの乗客の方々は誰一人慌てることなく、駅員にクレームすることもなくとにかく黙って乗っていました。

3.2 パッケージ1つに宿る「日本の強み」

これはタージマハル行き高速鉄道における出来事です。

日本でいうグリーン車の席を利用すると、紅茶かコーヒーの車内サービスがあります。
熱湯が入ったカップとパッケージに入った粉末を渡されます。そのパッケージを自身で開封し、注ぐ必要がありますが、開け口からもパッケージは開きませんでした。
それ以外にも、ケチャップなどのパッケージも同様に開けにくいものでした。

「開かないパッケージ」は、日本では不良品に近い評価を受けますが、インドの乗客は「そんなもんだ」と割り切り、力技でこじ開けたり、ハサミを利用して開封していました。

しかし、こうした小さな不便は、利用体験全体の印象を確実に左右します。
ホスピタリティ産業においては、細部のストレス解消がそのままレビュー評価や再利用意向に直結します。

もし日本式のユーザビリティ設計が導入されれば、食品メーカーや鉄道会社にとって、明確な差別化要因となり得るでしょう。

3.3 タージマハルに見えた「鑑賞体験」の改善余地

世界遺産タージマハルでも、体験設計の余地が見受けられました。 行列を作る観光客をどう「捌く」かの設計が不十分なため、鑑賞のペースが乱れ、場内は常に混雑。誘導員が声を張り上げて急かす光景は、せっかくの感動に水を差してしまいます。

動線設計、看板の配置、誘導ルール

日本が観光地で培ってきた「人の流れをデザインする技術」は、インドの豊富な観光資源の価値をさらに高めることができるはずです。

体験設計は、巨大な設備投資を伴わずに競争力を生み出せる領域です。
ここに日本企業の勝機があります。

4. 富裕層と外資の増加が「高品質サービス」をビジネスに変える

4.1 「良い体験」にお金を払う層の台頭

インドの超富裕層は2028年までに50%増加すると予測されています。彼らはすでに、世界トップレベルのクオリティを肌で知っており、自国でも同等の体験を求めています。 「安ければいい」という時代は終わり、「安心・清潔・快適」という目に見えない価値を正当に評価する顧客層が、確実に主役になりつつあります。

4.2 圧倒的な市場成長率と投資対効果

インドのホスピタリティ産業は、2024年の約2,473億ドルから、2029年には約4,756億ドル(約74兆円規模)へ成長すると予測されています(CAGR 13.96%)。

これは単なる施設数の増加ではなく、「体験価値」に対する支出が増える長期的な成長フェーズに入ったことを意味します。高品質なサービス提供は、今や単なる「差別化」ではなく、極めて投資対効果の高いビジネス戦略なのです。

4.3 「日本式運用」のグローバルな再現性

ユニクロが日本流の接客や店舗管理を世界標準として展開し、成功を収めているように、精緻なオペレーションはどの国でも通用する競争力になります。

市場が成熟するほど、商品そのもの以上に「提供の質」が勝敗を分けます。日本企業が持つ運用力やホスピタリティの思想は、インド市場において強力なアセットとなるでしょう。

5. 日本のホスピタリティは、すでにインドで「学ばれている」

5.1 国家レベルで導入される「カイゼン」

インド政府とJICAは連携し、製造業を中心に日本の「カイゼン(KAIZEN)」導入を支援してきました。

これは単なる効率化の手法ではなく、「作業の標準化」「無駄の削減」「現場の自律的な改善」という、日本流の運用設計思想そのものです。
日本式の改善思想は、すでにインド側が競争力向上の手段として認識しているテーマなのです。

5.2 インド企業も「運用力」を競争力と捉え始めている

インド市場では、外資系企業との競争が激化しています。
グローバルホテルチェーンや多国籍企業の進出により、顧客の期待水準は確実に引き上げられています。

その結果、インド企業側も「価格」だけではなく、

・サービスの一貫性
・品質の安定性
・レビュー評価の向上
・ブランド信頼性

といった要素を、明確な経営課題として捉え始めています。

製造業においては、日本型生産方式を導入した企業が高い品質評価を獲得してきました。同様の動きは、ホスピタリティやサービス領域にも広がりつつあります。

つまり、日本式の運用思想は「売り込む価値」ではなく、すでに市場側が必要としている価値なのです。

5.3 成功の鍵は「そのまま持ち込まない」こと

ただし、日本式を100%そのまま移植すれば成功するわけではありません。

人件費構造
労働市場の流動性
文化的なコミュニケーション様式

これらを踏まえ、日本の運用思想を現地環境に合わせて再設計することが不可欠です。

標準化し、教育体系を構築し、改善を回し続ける。
この「翻訳と実装」こそが、日本企業がインド市場で最も価値を発揮できる領域です。

まとめ|インドで問われるのは「何を作るか」より「どう提供するか」

インド市場は今、製造業のフェーズを超え、サービス・ホスピタリティ領域においても巨大な可能性を秘めたタイミングを迎えています。 日本企業の強みであるソフト技術は、もはや「あれば嬉しい」ものではなく、ビジネスを成立させるための「不可欠な要素」です。

貴社の強みは、インドのどの領域にマッチするのか?

日本独自の「品質管理」をインドのサービス業に活かすには?
成長する富裕層ニーズをどう捉えるか?
現地での運用設計をどう進めるべきか?


貴社の持つポテンシャルを、インドという巨大市場でどう開花させるか。
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株式会社インドの参考URL:

市場調査サービス https://indo1985.com/service-service-detail-02
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