【2025年版】インド現地法人設立ガイド:手続きプロセス解説
はじめに
近年、目覚ましい経済成長を遂げ、巨大なマーケットとして世界中から熱い視線を集めるインド。14億人を超える人口、その多くを占める若年層の活力は、多くの日本企業にとっても大きな魅力であり、新たなビジネスチャンスを求めてインド進出を検討されるケースが増えています。
しかし、その一方で、法制度や商習慣の違いから、
「何から手をつければ良いのか分からない」
「手続きが複雑そう」
といった不安の声を耳にすることも少なくありません。
この記事では、インドへの進出で特に多くの企業が選択する「現地法人(非公開有限会社 Private Limited Company)」の設立について、その手続きのプロセスと流れ、そして所要期間の目安を、できる限り分かりやすく、ステップごとに解説していきます。
インドでの第一歩を、確かなものにするためのお手伝いができれば幸いです。
1. インド現地法人設立の全体像と所要期間
インドでの現地法人設立プロセスは、以下の流れで進みます。各ステップにはそれぞれ重要なポイントがあり、全体の所要期間は準備状況によって変動します。

【STEP 1】設立前の準備
インドでの法人設立は、思い立ってすぐにできるものではありません。本格的な手続きに入る前に、しっかりと土台を固める準備段階が非常に重要になります。「どのような会社にするのか」という設計図を明確に描くことから始めましょう。
まず考えなければならないのは、会社の「顔」となる商号(会社名)です。
インドでは、既存の会社と類似した名前や、不適切とされる名前は認められません。そのため、希望の商号候補をいくつかリストアップしておくことが必須です。
次に、会社を経営していく取締役の選定です。インドでは最低2名の取締役が必要で、そのうち1名はインドに年間182日以上滞在する「居住取締役」でなければならない、というルールがあります。
この居住取締役の確保は、多くの企業にとって最初の課題となるかもしれません。
さらに、誰が会社のオーナーとなるのか(株主)、どれくらいの資本金で始めるのか、インド国内のどこに本社(登記住所)を置くのか、そして、その会社で具体的にどのような事業を行うのか(事業目的)といった、会社の根幹に関わる事項を具体的に決定していく必要があります。
これらの基本事項は、後の定款作成や登記申請の基礎となるため、この段階で明確にしておくことが、後のプロセスをスムーズに進める鍵となります。どのような形態でインドに進出するのが最適か、迷うこともあるかもしれませんね。
【STEP 2】取締役関連の手続き
会社の基本設計図が決まったら、次は実際に会社を動かす「人」、つまり取締役に関する手続きに進みます。
インド特有の制度として、DSC(電子署名証書)、DIN(取締役識別番号)、そしてPAN(納税者番号)の取得があります。これらは、インドで会社の取締役として活動するために、避けては通れない重要な手続きです。
DSCは、オンラインで行われる各種申請手続きにおいて、本人が電子的に署名したことを証明するためのものです。いわば、デジタルの実印のような役割を果たします。
DINは、各取締役に割り当てられる固有の識別番号で、一度取得すれば生涯有効です。
そしてPANは、インドにおける納税者番号であり、取締役は原則として取得が義務付けられています。
特に日本から派遣される取締役の場合、これらの取得には注意が必要です。申請には、パスポートのコピーや住所証明書類(運転免許証や銀行の残高証明書など)が必要となりますが、これらの書類が日本で発行されたものである場合、ひと手間加える必要があります。
それは、日本の公証役場で公証を受け、さらに外務省によるアポスティーユ認証、またはインド大使館・領事館による認証といった、「この書類は本物です」というお墨付きをもらう手続きです。
この認証プロセスは、思った以上に時間がかかることもあるため、早め早めの準備を心がけましょう。ここをスムーズに乗り越えられるかが、設立スケジュール全体にも影響してきます。
主な必要書類(取締役ごと):

(注)上記書類がインド国外発行の場合、公証+アポスティーユまたはインド大使館認証が必要。
※外務省:「証明(公印確認・アポスティーユ)・在外公館における証明」
【STEP 3】商号(会社名)の申請・承認
取締役の資格が整ったら、いよいよ会社の名前を正式に確保するステップです。
事前に決めておいた商号候補の中から、インド企業省(MCA)の会社登記局(RoC)へ、「この名前で会社を作りたいです」と申請を行います。
この申請は、SPICe+(スパイスプラス)と呼ばれる統合申請フォームのPart A、またはRUN(Reserve Unique Name)というフォームを通じてオンラインで行います。
なぜ複数の候補が必要だったかというと、ここで改めて審査が行われ、既存の会社名と紛らわしい、あるいは不適切と判断されると、その名前は使うことができないからです。
無事に審査を通過し、商号が承認されると、その名前は原則として20日間、あなたの会社のために確保されます。この20日間という期間は、次の設立登記申請を完了させるための猶予期間となります。
もし書類準備などで時間がかかりそうな場合は延長も可能ですが、基本的にはこの期間内に次のステップへ進む必要があるため、少しスピード感が求められる段階です。
※MCA=Ministry of Corporate Affairs(インド企業省)
【STEP 4】設立登記申請
商号も無事に確保でき、取締役の準備も整ったら、設立プロセスはいよいよクライマックス、会社設立の登記申請です。これは、インド政府に対して「ここに、こういう会社を正式に作ります」と届け出る、最も重要な手続きと言えるでしょう。
この申請には、会社の憲法とも言える重要な書類、「基本定款(MOA)」と「付属定款(AOA)」の作成が必要です。
基本定款には、会社の商号、登記上の本店所在地、主な事業目的、資本金の額などが記載されます。
一方、付属定款には、株式の発行ルール、株主総会の運営方法、取締役会の権限など、会社の内部的な運営ルールが定められます。これらの定款は、会社のあり方を法的に定義するものであり、慎重に作成する必要があります。
これらの定款に加え、取締役が就任を承諾する旨の書類(DIR-2)や、過去に法令違反などがないことを誓約する宣誓供述書(INC-9)など、いくつかの補足書類とともに、SPICe+フォームのPart Bを使って、企業省(MCA)および会社登記局(RoC)へオンラインで提出します。
このSPICe+フォームは非常に効率的で、会社の設立登記だけでなく、会社のPANやTAN(源泉徴収番号)、場合によってはGST(物品サービス税)番号などの各種登録も同時に申請できる仕組みになっています。
主な必要書類(申請時):

【STEP 5】設立証明書(COI)の受領
すべての申請書類に不備がなく、審査が完了すると、会社登記局(RoC)から「設立証明書(COI: Certificate of Incorporation)」が発行されます。
このCOIを受け取った瞬間、あなたの会社は法的にインドで誕生したことになります。長い道のりでしたが、これで晴れてインド法人のオーナーです。一つの大きな節目であり、喜びもひとしおでしょう。
【STEP 6】法人設立後の重要手続き
設立証明書(COI)を受け取って、ほっと一息つきたいところですが、実は、会社を実際に動かしていくためには、まだいくつか重要な手続きが残っています。登記完了はゴールではなく、本格的な事業活動に向けた新たなスタートラインなのです。
まず、COI受領後30日以内に、第一回目の取締役会を開催することが法律で義務付けられています。
この最初の会議では、会社の登記内容を確認したり、今後の事業運営に不可欠な法定監査人を選任したり、取引銀行を決定して口座開設の承認を得たりと、重要な意思決定を行います。
次に、取締役会で承認された銀行で、会社の銀行口座を開設します。これがなければ、資本金の受け入れや、従業員への給与支払い、取引先との決済など、事業活動に必要なお金のやり取りができません。
口座が開設できたら、日本(または他の国)の親会社等から、定款で定めた資本金を送金します。資本金が無事に着金したら、誰にどれだけの株式を割り当てるかを決定し、その内容をインド準備銀行(RBI)へ報告する必要があります。
この報告(Form FC-GPR)は、株式割当後30日以内という期限が定められているため、注意が必要です。
さらに、会社設立日から180日以内に、「私たちは事業を開始する準備が整いました」という届出(Form INC-20A)を会社登記局(RoC)へ提出しなければなりません。これを怠ると罰則の対象となる可能性もあるため、忘れずに行いましょう。
この他にも、会社法で定められた各種の法定登記簿(株主名簿、取締役名簿など)を整備・保管するといった、地道ながらも重要な初期コンプライアンス作業があります。会社設立後のこれらの手続きを漏れなく、期限内に実行していくことが、インドで安定した事業基盤を築く上で非常に大切になります。
2. 設立をスムーズに進めるためのポイントと注意点
ここまで、インドでの現地法人設立のプロセスを追ってきましたが、この複雑な手続きをスムーズに進めるためには、いくつか押さえておきたいポイントがあります。
2.1 信頼できる現地専門家との連携
まず最も重要なのは、信頼できる現地の専門家をパートナーとして見つけることです。
会社法、税法、労務など、インド特有の法規制は複雑で、頻繁に改正も行われます。現地の事情に精通したコンサルタントや弁護士、会計士、会社秘書役(Company Secretary)といった専門家のサポートは、設立プロセスを円滑に進める上で不可欠と言えるでしょう。
2.2 事前の情報収集と計画的な書類準備
次に、事前の情報収集と計画、特に必要書類の準備を徹底することです。
特に日本で準備する書類の認証プロセス(公証+アポスティーユ等)は、予想以上に時間がかかることがあります。必要な書類は何か、どのタイミングで、どのような手続きが必要なのかを事前に正確に把握し、余裕をもって準備に取り掛かることが、全体のスケジュールを左右します。
2.3 各種手続きの「期限」を厳守
また、各ステップには、守らなければならない期限が設定されています。商号承認後の有効期間、第一回取締役会の開催期限、RBIへの報告期限、事業開始届の提出期限など、これらの期限管理を怠らないことが重要です。
2.4 居住取締役の確保という課題
そして、居住取締役の要件を満たす人材を確保することも、設立に向けた大きな課題となり得ます。事前に候補者を探し、協力を取り付けておく必要があります。
インドでの会社設立は、決して簡単な道のりではありません。しかし、これらのポイントを押さえ、注意深く準備を進めれば、必ず乗り越えることができます。
まとめ
インドでの現地法人設立は、事前準備から始まり、取締役関連の手続き、商号申請、登記申請、そして設立後の各種手続きと、多くのステップを踏む必要があります。それぞれの段階で、インド特有のルールや注意点が存在し、時には時間と忍耐が求められる場面もあるでしょう。
しかし、この記事でご紹介したプロセスとポイントを理解し、しっかりとした計画を立て、信頼できるパートナーと共に歩めば、その道のりは決して乗り越えられないものではありません。成長著しいインド市場への扉を開き、あなたのビジネスを成功に導くための第一歩です。
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参考URL:
市場調査サービス https://indo1985.com/service-service-detail-02
現地法人設立サービス https://indo1985.com/incorporation
営業代行サービス https://indo1985.com/sales-outsourcing
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