100超の産業団地を持つ栃木県──中堅メーカーがインド市場で価値を出せる理由

Jan 04, 2026By Rie Ohno
Rie Ohno

はじめに|「ものづくり県・栃木」と海外進出の現在地


栃木県は、日本有数の「ものづくり県」として知られています。自動車部品、精密機械、医療機器などの分野で、世界に通用する技術を持つ中堅・中小メーカーが密集しており、県内には100か所を超える産業団地が整備されています。

しかし、その実力に反して、栃木県企業の海外進出率は決して高いとは言えません。帝国データバンクの調査によれば、県内企業の海外進出率は2割に満たず、多くの企業が依然として国内市場を主戦場としています。一見すると保守的な数字ですが、これは「まだ多くの企業が本格的に動いていない、巨大な余白が残されている」という大きなチャンスの裏返しでもあります。

本記事では、栃木県の産業構造と、実際にインド市場へ踏み出している先行企業の事例をもとに、なぜ今、栃木の中堅メーカーがインドで勝負すべきなのかを深掘りします。

1. データで見る「ものづくり県・栃木」の圧倒的な地力

栃木県は、全国的に見ても製造業への依存度が極めて高い地域です。その経済基盤は、単なる工場の集積ではなく、多層的なサプライチェーンによって支えられています。

1.1 製造業が地域経済を牽引する強固な構造

栃木県の製造品出荷額等は約8.2兆円にのぼり、県内総生産に占める製造業の比率は41.2%と全国第2位を誇ります。宇都宮清原工業団地をはじめとする大規模な産業拠点には、自動車関連、樹脂加工、精密機械、医療機器など、多様な分野の企業が集積しています。

1.2「工程・部材・品質」を支える厚い企業層

栃木の真の強みは、完成品メーカーが集中している点だけではありません。それら大手を支える工程設計、部材供給、そして厳しい品質管理を担う中堅・中小企業の層が非常に厚いことにあります。この「代えのきかない技術力」こそが、海外市場、特にインドのような新興国で求められる最大の武器となります。

2. 海外進出率17.9%が示唆する、栃木企業の「国内志向」と「慎重姿勢」

技術力がある一方で、海外展開については慎重な姿勢が目立ちます。最新の意識調査からその背景を探ります。

2.1 低下傾向にある海外進出率

帝国データバンクの「栃木県・海外進出に関する企業の意識調査(2025年)」によると、県内企業の海外進出率は17.9%にとどまりました。これは2019年調査よりも低下しており、コロナ禍や地政学リスクの影響を受けて、多くの企業が足元の国内市場を再重視していることが伺えます。

2.2 インドはまだ「検討前夜」の市場

現在の主な進出先は中国、ベトナム、タイ、インドネシアといった国々が上位を占めています。インドは「関心はあるが、具体策には至っていない」という企業が大半であり、進出の「優先度」としてはまだ高くありません。しかし、この「他社がまだ動いていない」状況こそ、先んじて動く企業にとっての先行者利益を生む土壌となっています。

参考:「栃木県・海外進出に関する企業の意識調査(2025年)」

3. インド市場が渇望する「栃木のDNA」

現在、インドではEV(電気自動車)シフトや製造業振興策「メイク・イン・インディア」が加速しています。ここで、栃木企業の強みがピタリと合致する理由があります。

3.1 製造の高度化に伴う「供給不足」

インド国内では製造の現地化が急速に進んでいますが、金型、精密部品、高度な品質管理といった領域で、日本水準のものづくりを安定的に担える企業は依然として不足しています。特に自動車部品や医療機器の分野では、現地調達の質を高めることが急務となっています。

3.2 需要と供給のミスマッチを突く

多くの日本企業がASEAN市場に注力する中で、インド市場には「高度な技術需要に対して、信頼できる供給源が追いついていない」という余白が残されています。100超の産業団地で切磋琢磨してきた栃木の企業にとって、このミスマッチは大きな商機です。

4. 栃木からインドへ──成功を引き寄せる先行企業の実例

実際にインド市場で価値を証明している、栃木を代表する2社の戦略を詳しく見てみましょう。

4.1 株式会社マニー:段階的な「市場教育」と信頼構築

宇都宮市に本社を置くマニーは、手術用縫合針や歯科治療器具で世界トップクラスのシェアを持つ医療機器メーカーです。同社のインド展開は、決して無理な大規模投資から始まったものではありませんでした。

駐在拠点からのスタート:2016年にムンバイへ駐在員事務所を設置し、市場調査と代理店開拓を徹底しました。
人財の現地化と教育:日本で採用したインド人社員を現地へ派遣し、ブランドの浸透を図りました。
リスクを抑えた成長:輸出から始め、需要の拡大に合わせて現地法人の検討へと進む「ステップアップ型」の進出は、多くの中堅企業にとっての模範となります。

参考:日本経済新聞記事

4.2 株式会社エフテック:金型技術という「最上流」での差別化

小山市や芳賀町を重要な技術・生産拠点とする自動車部品メーカー、エフテックの戦略はより構造的です。同社はインドの現地企業を子会社化し、強みである「金型事業」を核に据えました。

金型というコアの掌握:完成品での価格競争ではなく、製造の脳と言える「金型」の上流工程を押さえることで、現地での技術的優位性を確立しました。
顧客価値の最大化:現地で金型から生産まで一貫して対応できる体制は、インド市場のスピード感に応える大きな武器となっています。
 

参考:エフテック、インドで鋼材加工・プレス部品製造・金型製造を手掛けるIndia Steel Summitを買収

5. 栃木型・インド進出を成功させるための4つの共通点

先行事例を分析すると、栃木の中堅メーカーがインドで勝機を掴むための共通のパターンが見えてきます。

5.1 スモールスタートと段階的関与

いきなり大規模な工場を建設するのではなく、まずは駐在員事務所や有力な販売代理店の開拓から始め、現地の「温度感」を肌で感じながら投資を拡大させています。

5.2 ニッチな技術領域での勝負

価格競争に巻き込まれる汎用品ではなく、自社の強みである「精度」「耐久性」「工程力」が評価される領域を見極め、そこを突破口に市場へ入り込んでいます。

5.3 「マザー工場」としての栃木拠点の活用

海外へ進出しても、栃木の本社や工場を「マザー拠点(技術の源泉)」として維持し続けています。現地の製造ラインが困難に直面した際、栃木の熟練工がサポートできる体制が信頼の裏付けとなっています。

 
おわりに|今こそ「次の一手」を考える好機

帝国データバンクの調査が示す通り、栃木県内企業の多くがまだインドに対して慎重です。しかし、マニーやエフテックのような成功事例は、インドが「出遅れた市場」ではなく、「これから明確な差がつく市場」であることを証明しています。

100超の産業団地が長年育ててきた栃木のものづくりの実力は、今、インドという巨大な成長エンジンと結びつくことで、新たな価値を生み出そうとしています。国内市場の成熟が進む中、自社の強みをどこに投下すべきか。その答えの一つが、インドにあることは間違いありません。

株式会社インドでは、栃木県企業の皆様のインド進出を強力にバックアップしています。 「自社の製品がインドのどのセクターで求められているのか」「まずは市場調査から始めたい」といった具体的なご要望がございましたら、ぜひお気軽にお問い合わせください。

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参考URL:

市場調査サービス https://indo1985.com/service-service-detail-02
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