インドの離職率は本当に高いのか? ── 定着しない理由と、人が辞めない企業の共通点
はじめに|インドの離職率は「高い」のではなく「考え方が違う」
インド進出や現地採用を検討する日本企業から、よく聞かれる不安のひとつが
「インドは離職率が高いのではないか」という点です。
確かに、日本と比べるとインドでは転職が一般的で、人材の流動性も高い傾向があります。
しかしそれは、「人が定着しない国」という意味ではありません。
実際には、
離職が起きやすい企業には共通する構造があり、
逆に、人が長く働き続ける企業にも明確な共通点がある
ということが、複数の調査や企業事例から見えてきています。
本記事では、インドにおける離職の背景を整理したうえで、インドで人材を定着させるために、企業側が設計すべきポイントを具体的に解説します。
1 インドで離職が起きやすい理由
1.1 転職は「当たり前のキャリア選択」
インドでは、転職はネガティブな行動ではなく、
キャリアを前に進めるための合理的な選択と捉えられています。
数年ごとに環境を変えることは一般的
転職=スキルと市場価値を高める行動
同じ役割・同じ条件が続くことは停滞と見なされやすい
そのため、日本的な「長く勤めること=評価される」という前提のまま組織を作ると、価値観のズレが生じやすくなります。
1.2「成長している実感」がないと離職につながる
インド人材が離職を考える際、最も重視する要素のひとつが
「この会社にいて、自分は成長できているか」という点です。
以下が見えにくい環境では、離職リスクが高まります。
- スキルがどう積み上がっているのか
- 次に目指せる役割・ポジション
- 今の仕事が将来にどうつながるのか
給与だけでなく、「成長のストーリー」が示されているかが重要です。
2 日系企業で離職が起きやすいポイント
2.1 評価・昇給の基準が伝わっていない
日系企業に共通しやすい課題のひとつが、
評価や昇給のロジックが社員に十分伝わっていないことです。
- なぜこの評価なのか分からない
- 何を達成すれば昇給・昇格できるのか不明確
- フィードバックが少ない
評価制度そのものよりも、「説明不足」が離職の引き金になるケースは少なくありません。
2.2 裁量や意思決定の機会が限定的
成長意欲の高い人材ほど、
- 任されたい
- 判断に関わりたい
- 自分の意見を反映させたい
という欲求が強い傾向があります。
意思決定がすべて本社主導で進み、現地社員の裁量が小さい場合、「この会社ではこれ以上成長できない」と判断されやすくなります。
2.3 上司との対話不足
離職理由として見落とされがちなのが、
直属の上司との関係性です。
- 定期的な1on1がない
- フィードバックが年1回のみ
- 日常的な会話が少ない
こうした環境では、不満が蓄積され、
条件が大きく変わらなくても転職を選ぶケースがあります。
3 インドで離職率を下げるための具体策
3.1 キャリアパスを「言語化」する
インドで定着率が高い企業に共通するのは、
キャリアの道筋が明確に言語化されている点です。
例えば、
- 1年後・3年後の役割イメージ
- スキルや成果と昇格の関係
- 次のステップに進むための条件
をあらかじめ示すことで、
「この会社にいれば、こう成長できる」という安心感を与えられます。
3.2 入社後90日間を意図的に設計する
離職が最も起きやすいのは、入社初期です。
有効とされているのは、
- 期待されている役割の明確化
- 小さな成功体験を積ませる業務設計
- 定期的なチェックイン(週次・隔週)
入社後90日間を「放置しない」ことが、早期離職防止につながります。
3.3 フィードバックの頻度を増やす
年に1回の評価面談だけでは、十分とは言えません。
- 月1回の1on1
- 成果だけでなくプロセスへのフィードバック
- 改善点と期待をセットで伝える
こうした継続的な対話が、エンゲージメント向上と定着につながります。
4 離職率とどう向き合うべきか
4.1 離職率ゼロを目標にしない
インドでは、一定の離職は前提条件と考える方が現実的です。
重要なのは、
- 入社してすぐ辞める人を減らす
- 育てた人材が短期間で流出しないようにする
- キーパーソンを定着させる
という「質」を意識した離職率管理です。
4.2 属人的対応ではなく制度で支える
人材定着に成功している企業ほど、
- 評価制度
- キャリア設計
- フィードバックの仕組み
が、特定の上司や担当者に依存せず、
誰が運用しても回る形で整備されています。
4.3 日本式をそのまま持ち込まない
日本では暗黙の了解で済むことも、
インドでは明確に言語化しなければ伝わりません。
- 期待を言葉にする
- 判断基準を共有する
- 対話の量を増やす
これらは、インドでは「離職防止策そのもの」と言えます。
おわりに|インドの離職率は「設計でコントロールできる」
インドの離職率は、日本と同じ基準で見ると高く感じられるかもしれません。
しかしそれは、インドの労働市場とキャリア観の違いによるものです。
- 成長が見えているか
- 評価が説明されているか
- 対話が仕組みとして存在しているか
これらを整えることで、インドでも人材は十分に定着します。
離職率を「避けるべきリスク」と捉えるのではなく、
組織設計を見直すための指標として向き合うこと。
それが、インド事業を安定的に成長させるための第一歩です。
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出典(参考リンク)
https://www.jetro.go.jp/biz/areareports/2024/cfbcd1087c1bb1d4.html
https://www.jetro.go.jp/biz/areareports/special/2024/0303/6549a37f23dbf407.html
https://www.sociabble.com/in/blog/employee-engagement-in/employee-retention/
https://www.forbes.com/sites/sylviavorhausersmith/2012/07/02/how-to-stop-employee-turnover-in-india/
