滋賀の水処理技術がインドを潤す──14億人国家が求める“日本品質”とは?
はじめに
琵琶湖という日本最大の湖を有する滋賀県。
この地では古くから、自然との共生を重んじながら、持続可能な水利用と環境保全を軸とした技術が磨かれてきました。
下水処理、排水再利用、水質モニタリング──そうした滋賀県発の「水を活かす」技術は、いまや海外でも高く評価され、東南アジアを中心に導入が進みつつあります。
中でも、今後10年で最も成長が期待されるのがインド市場です。
急速な都市化と工業化によって水需要が拡大する一方、インフラ整備の遅れや水質悪化という課題を抱えるインドでは、「日本のような高品質・高耐久の環境技術」に対するニーズが急速に高まっています。
本記事では、滋賀県が育んできた環境・水処理関連技術が、インド市場でなぜ注目されているのか。
そして、県内の中小企業がそのチャンスをどう掴めるのかを、政策・制度・販路・アクションステップの観点からご紹介します。
1. インドの水インフラと環境課題──なぜ今、日本の技術が求められているのか
広大な国土と14億人の人口を抱えるインドでは、近年、急速な都市化と産業の成長が進んでいます。
とりわけ上下水道や工業排水といった「水」に関するインフラ整備は国家的な課題とされており、政府主導でさまざまな政策やプロジェクトが進められています。
その代表例が、「Namami Gange(ナマミ・ガンゲ)」と呼ばれるガンジス川浄化プログラム。
数千kmにもわたる川の再生を目的に、浄水・下水処理・廃棄物処理施設の新設や既存設備の改修など、国家規模の整備が進行中です。
また、都市再開発を軸とした「Smart Cities Mission」や、産業廃水の処理強化を目指す地方自治体のプロジェクトも相次いでおり、環境技術への期待は年々高まっています。
こうした動きは、民間企業にとっても無関係ではありません。
繊維、食品、化学、製薬などの業種では、CPCB(中央公害管理委員会)の規制強化に対応するため、排水処理・水再利用の技術導入が進み、環境対応が入札や輸出の条件となるケースも増えています。
まさに今、インドでは「高品質・高耐久・省エネ・安全性」といった日本製の水処理技術が必要とされています。
滋賀県の企業が長年培ってきた経験や製品群は、この大きな潮流において確かな存在感を放つポジションにあるといえるでしょう。
2. 滋賀県の環境対応技術の強み──琵琶湖で磨かれた信頼の力
2.1 琵琶湖に根ざした環境技術
滋賀県は、日本最大の湖・琵琶湖を擁し、長年にわたり水環境の保全と利活用に取り組んできました。
この地で発展した排水処理、膜ろ過、IoT水質モニタリングといった技術は、省エネ・高耐久・低メンテナンスという特長を備え、工業排水や生活排水に悩むインド市場で高く評価されています。
2.2 【システム提案力】が信頼を生む武器に
特に、単一装置ではなく「システム全体を提供し、運用後も支援できる」姿勢は、現地の企業や自治体にとって大きな安心材料となっています。
こうした滋賀発の総合的な水処理技術は、まさにインドの現場が求める信頼性に直結しているのです。
2.3 インドで評価される日本の水処理技術の特徴

3. 滋賀県発の水処理関連企業が狙うBtoB・BtoG、ふたつの市場とターゲット層
インドにおける水処理・環境技術の導入先は、大きくBtoB(民間企業向け)とBtoG(政府・自治体向け)の2つに分かれます。
いずれも滋賀県の企業にとって現実的なターゲットとなり得ますが、そのアプローチ方法は大きく異なります。
まず、BtoB市場では、工場排水やプロセス水の処理に課題を抱える製造業が有力な導入先です。
特に繊維、食品、製薬、化学といった分野では、CPCB(中央公害管理委員会)の排水基準や、欧米向け輸出で求められるGMP・HACCP対応の観点から、水処理設備の刷新や高機能化が急務となっています。
中でも「コンパクト・省エネ・メンテ不要」といったキーワードを満たす日本製品は、高価格帯でも導入意欲が高い傾向にあります。
一方、BtoG領域では、先述のガンジス川浄化プロジェクト(Namami Gange)や、スマートシティ整備、「Jal Jeevan Mission(ジャル・ジーヴァン・ミッション)」といった国家主導の上下水整備計画が進行中です。
これらは入札を通じて外資系企業も参画可能であり、日本企業の技術はJICAやODAなどの枠組みと親和性が高く、導入実績も徐々に積み上がっています。
滋賀の中小企業にとっては、まずはBtoBでの個別提案による導入実績を積み、その後、商社や大手プラント企業と連携してBtoG案件へと拡張していくステップが現実的です。
4.滋賀県発の水処理関連企業が押さえるべき制度と規格
どれだけ良い製品や技術を持っていても、それが「制度」に合致していなければ現地では流通できません。
インド市場においては、技術者・営業担当者にとって馴染みの薄い認証や登録制度が複数存在しており、事前に把握しておくことが不可欠です。
4.1 BIS認証──品質を示すインド版JIS
水処理関連機器の輸出・導入において、まず確認すべきは「BIS認証(Bureau of Indian Standards)」の有無です。
インド政府が定めるこの制度は、日本でいうJISのようなもので、一部製品は取得が義務づけられています。
対象となるカテゴリは随時更新されるため、現地商社や制度に詳しいコンサルタントとの連携が有効です。
特に、ろ過膜や電気機器類などは注意が必要で、計画段階からの確認が求められます。
4.2 GST登録──商取引の基本インフラ
さらに、インドで取引を継続的に行う場合、GST(Goods and Services Tax)の登録が求められます。
これはインド版の付加価値税であり、日本で言うところの「法人番号+インボイス制度」に近い存在です。
GST番号を取得することで、現地バイヤーとの正式な取引が可能となり、仕入先としての信用度も格段に高まります。
また、インド側パートナーにとっても、GST登録された取引先との商流であれば税務上の控除を受けられるため、選定基準として重視される傾向があります。
登録はインド現地法人または販売代理人を通じて行うのが一般的で、スムーズな取引を望む場合には早期対応が望まれます。
4.3 CPCB・PCB──排水規格と現場ごとの対応
加えて、現地で実際に設備を導入する段階では、CPCB(中央公害管理委員会)および各州ごとのPCB(Pollution Control Board)の定める排水規格や設置許可制度も視野に入れなければなりません。
排水のBOD/COD値、処理後水質の基準、運転管理体制など、規制内容は産業種別や地域によって異なるため、現場ごとに仕様を調整する柔軟性が求められます。
4.4 規制は“リスク”ではなく“信頼性の証明”
制度や認可は、一見ハードルのように映りますが、見方を変えれば【日本の品質を示すチャンス】でもあります。
滋賀県の企業が持つ高信頼・高性能な技術は、適切な制度対応とセットで提示することで、インド側からの信頼や入札条件への適合性を飛躍的に高めることができます。制度の壁を越えた先には、強固な市場基盤が待っています。
5. インド輸出に向けた滋賀県水処理関連企業のアクションプランとは?
では実際に、滋賀県内の水処理・環境技術企業がインド市場に進出するには、どのようなステップを踏めばよいのでしょうか。ここでは、事業フェーズに応じた4段階のモデルをご紹介します。

ステップ1:市場の理解とニーズ把握
まずは現地ニーズの正確な把握が欠かせません。
JETROのマーケットレポートや、商社・展示会を通じた生の声を通じて、
「どんな水処理が求められているのか」
「どの業種が困っているのか」
を知ることが第一歩です。滋賀県主催のミッション参加も有効な手段です。
ステップ2:製品の現地適応と仕様整理
次に、自社製品がインドの制度や市場に適合しているかを確認します。
水質や電圧、設置スペース、維持管理体制の違いを踏まえた仕様調整、マニュアルの多言語対応、必要に応じた認証取得もこの段階で準備します。
ステップ3:販路の設計とパートナー探し
BtoB・BtoGいずれに進むにせよ、現地パートナーの存在は重要です。
JETROや商工会議所を通じて信頼できる販売代理店や技術協業先を選定し、役割分担や契約形態を整理します。
滋賀県発の事業として、地元ブランドを活かした発信も一考です。
ステップ4:パイロット導入と継続支援
いきなり大規模案件に挑むのではなく、小規模な実証導入から始めることで、現地との信頼関係を築くことができます。
特に環境分野では、継続的な運転管理とサポート体制の信頼性が重要視されるため、導入後の支援プランも含めた【伴走型提案】が鍵となります。
まとめ:“琵琶湖の技術”がインドの水を支える時代へ
水と環境に関する課題は、今後さらに深刻化すると予測されています。
とりわけインドのような超人口国において、水処理インフラの整備は「経済成長の前提条件」となりつつあります。
その現場でいま、日本の技術、そして滋賀県の技術に白羽の矢が立っているのです。
大量生産ではない、少量でも信頼性が高く、現場に寄り添った製品と技術。
琵琶湖を守るために磨かれた技術は、まさにいま、インドの持続可能な未来を形づくる大きな一歩となり得ます。
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